2012年06月07日

生活保護騒動で見逃されているもの


 人間というのは、非常に便利な生き物でして、見たいと思った物や聞きたいと思った音のみを、見分けたり聞き分けたりするそうです。
 例えば、雑踏の中で友人と会話をしていて、相手の声を聞き分けるなんてのはそういう能力を発揮しているということのようですね。

 私自身も、見たいもの、聞きたいもののみを得ようとしているなぁということで、最近可愛い娘の笑顔しか視界に入りません。




 さて、芸人というには余りにお粗末な次長課長の河本氏、キングコングの梶原氏が、親族の生活保護受給に関して謝罪を行ったりしていました。あれが炎上芸だったら、芸人としてさぞかしと褒めたたえたいところですが、どうもそうはいかなさそうです。
 法律的には合法でも、心情的にはちょっと認められにくいというのは、それはその通りですが、そこが本当に一番大事なんでしょうか?

 あ、私自身は、河本さんも梶原さんもお会いしたことも無いので、別に彼らがやったこと云々をどうこう言うつもりは有りません。
 せいぜい彼らが、今回のことを踏まえて熟考し、今後ますます多額の税金を納付できるように頑張って頂ければ幸いだと思います。あとは、こういうネタを自分の腹芸としてできるようになれば、なお良し、という感じでしょうか。

 正直、医療機関で働いていると、多くの生活保護受給者と接することになります。
 個々人の人となりや、過去の経緯などについて、ここで詳らかにするつもりは一切ありません。ただ、彼らと接していて、もっと考えないといけないこと、国が本当に進むべき方向性について思うところが有ります。

 生活保護受給者数が210万人に迫ろうとし、その支出額は3兆7000億円を超えたという報道が出ています。

 実際の詳しいデータは、厚生労働省から発表になっていますね。

 福祉行政報告例(平成24年2月分概数)|厚生労働省
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/gyousei/fukushi/m12/02.html

 受給総人数は分かるんですが、金額などがこの資料だと出てないんですね。しかも、統計資料を探すのが非常に面倒で、そりゃみんなちゃんと調べないで物を言うだろうなぁ。

 東日本大震災等、仕方のない要因も有り、私自身もいつかはお世話になるかもしれないセーフティネットですから、一過性の感情でその制度その物を大きく改革するのは、どうなんだろう? と思います。
 ま、上流階級は相手にしないだろうし、下層社会はドングリの背比べでお互いにお互いの靴を投げ合って、慌てて拾いに行くような状況でしょうから、本当に心配しているのは中流階級だけなんでしょうけど。
 なので、テレビの中の人や、新聞社の中の人なんかは、下層階層の人間が傷つけあって舐めあっているのを見て、「これはネタになりそうだな」と取り上げている状況なんでしょうけどね。

 実際に如実に表れているのは、支払われている内訳です。

 高齢者に約4割、医療扶助で約4割、生活保護費は消えています。

 これで、金額にして約3兆円です。今回の不正受給騒動も含め、不正受給額は推定で約200億円足らず。本当に問題にすべきは、そこじゃないでしょ? というのは、ここの割合の話です。
 金額として、比較する物が大きいのですが、200億円も大きな金額ですけどね。

 もちろん、不正受給は有ってはいけないですし、今回の騒動だって、河本氏や梶原氏がやっていたことは褒められたものではありません。
 そして、最近急激に片山さつき氏がバッシングされているのも気持ち悪い。
 でも、生活保護制度の改善を考えるのであれば、やはり大事なのは大きな部分へ切り込む勇気じゃないでしょうか。

 ここ30年くらいで言えば、少子化や年金制度の崩壊が更なる受給者増を招いていて、本質的にはそこもセットで解決しないといけないんだけど、そこまで話をしちゃうと、なんだか問題が外部化されてしまうようで、うやむやになっちゃうんですよね。
 やったことは良くないことだった、というコンセンサスが社会的に取られて、それで不正受給へのブレーキになるのであれば、一罰百戒はしょうがないのかもしれないし、スケープゴート乙で良いのかもしれません。

 じゃ、本気で本丸に切り込んで、社会保障制度を今後とも発展、維持するためには何が必要なんでしょう?

 例えば、国民年金の支給額が生活保護受給額に届いていないので、差額を生活保護でもらう問題。
 年金生活者は医療費が高くて受診抑制しているが、生活保護の患者は無料なので、検査でも薬でも、自分の健康の為に要求し放題。
 現在年金を支払っていない人や、親の生活にパラサイトしていて財産形成をしていない人たちの将来無年金になったりするケース。
 非正規労働で家族も財産形成もできない人たちの将来。

 問題山積で、今のままではどうにもならないわけです。

 そこで解決策の一つ。
 生活保護は、将来自立して生活する為に、勤労世代をセーフティネットで保護するための制度として確立してはどうでしょう。
 年金受給年齢以降は、別のセーフティネットを用意し、それこそ今まで蓄積してきた年金総額+国家から一定額の補助=出てきた金額を年代の人口で割った数字を受給とか。
 少なくとも、年金賦課方式は既に崩壊しているんだから、このままじゃ無理でしょ? と思います。

 これで、高齢者への生活保護費の問題を切り離したら、次は医療扶助ですよね。
 医療扶助については、医療者側も、今まで説明をさぼってきたと思います。正直、今の医療情勢で言えば、院外薬局でいくら薬を出しても、医者は儲かりません。キックバックもらってたら分かりませんが、そういうのは論外。
 「生活保護の患者を受け入れたがるのは、とりっぱぐれが無いからだ」という批判が有りますが、いやいや、それ以前に医療費未払い自体が良くないことでしょ? と思いませんか?
 あと、病気で働けなくなって、生活保護というケースは、自分も将来有り得なくはないので、是非認めたいと思います。

 ただ、医療費について一部自己負担が発生することを認めてはどうでしょうか? 実際に患者も、薬がただで貰えるからと、睡眠薬や湿布薬、風邪薬などをすぐに貰おうとする気質は有ります。
 これは、抑制しないといけないでしょう。

 これで、医療扶助の問題を考えてみて、後は自立の問題です。

 例えば、勤労世代で生活保護の受給者は、国が一定の作業を与えることで、受給資格を得るというのはどうでしょうか?
 例えば、就職活動を一定程度することにして、それ以外の時間は、公園清掃や役所の便所掃除とか。道路清掃でもいいですし、林業や農業の手伝いでも構いません。
 大事なのは、「何もしないで受給する」のではなく、「一定の労働の対価として受給する」という形です。

 もしも、20代から30代で健康なのに職が無いというのであれば、みなし公務員として採用し、尖閣諸島で半年共同生活して衣食住の面倒は見ますよ、でもいいと思います。
 選抜公務員制度という話も有りますが、誰だってやりたくないな、という仕事は有ります。それを就労に問題が無く、ただ職にあぶれている人たちにあてがう。今後、日本の労働人口が減少していく中で、彼らを「就職のミスマッチ」という魔法の言葉でごまかして、ただ受給させておくのは社会の大きな損失だと思わないと。

 今回のことが、本当に不正受給だったのか、他の不正受給者はどれだけいるのかは、司法の手がきちんと裁いてくれれば良いはずです。本質的な部分をマスクして、ただ騒いでいるっていうのは、そこは大衆政治としてどうかとは思いますが、これをきっかけにして、より良い社会保障制度についてみんなが関心を持ってくれれば嬉しいなと考えています。

 文章を書いてから、今さらながら他の人たちの論調を読んでいたら、次のようなBlogも有りました。非常によくまとまっていると思うし、大事なことがたくさん書いてあると思います。

 河本準一氏叩きで見失われる本当の問題 [絵文録ことのは]2012/05/25
 http://www.kotono8.com/2012/05/25komotojunichi.html

 今回のことが、生活保護受給者に対するネガティブキャンペーンに使われないことを切に祈りますし、それで支給額を下げる話になっちゃうのは、なんだか残念です。財務官僚の言いなりっぽい雰囲気がします。
 ケースワーカーの数も足りないし、高齢者の受給世帯には、新しい枠組みをきちんと作っていくことが、問題の解決への近道じゃないのかなぁと考えてやみません。
posted by あずまっち at 23:47| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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河本 TV仕事減でも一生安泰
Excerpt: なんかズレてるゾ、この記事 [はあぁ!?/]次課長の河本が言ったことに対して、これだけの知名度がありゃ営業で稼ぎまくることが可能だからこの先一生安泰って語ってるけどさ。そりゃ本人が元気ならそうだろうけ..
Weblog: 時々時事爺
Tracked: 2012-06-08 23:18
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